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Aさん(36歳)の場合

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Aさんは、36歳で片方の乳房温存術と放射線療法を受けました。以前は、ご主人と週1度程度の性生活がありました。退院直後は毎日の暮らしに精一杯でしたが、数ヶ月たって大分調子が戻ってきました。ある晩ご主人がそっと求めてきたのですが、からだが大丈夫なのか心配になり、思わず断ってしまいました。ご主人は無理強いをしませんでした。その後、さらに数ヶ月たちましたが一度も求められません。暮らしはほぼ元通りになり、性生活以外は二人の会話も以前と変わらないのですが、Aさんもご主人もあえてこの話題には触れませんでした。

そういえば、担当医や看護師との話でも、退院後の性生活の話は出ませんでした。Aさんとしては性生活を再開したい気持ちはあるのですが、何をどう気をつけたらいいのかわからず、不安です。ご主人が本当はどう思っているのかも気になります。とはいえ、一体誰に聞いたらいいのか見当がつきません。「入院中に先生たちが何も話さなかったということは、もう性生活は諦めろということかしら」とさえAさんは思いました。

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思い切って、同じ治療を受けている同年代の患者仲間Bさんに相談してみました。すると、「うちは3ヶ月で始めたよ、もっと早い人もいるみたいだけど」と言います。驚いたAさんは、「前と同じようにできるの?」と聞きました。するとBさんは「うん、でもいろいろ工夫しているの」と言い、はじめのうちは相手の反応が怖くてTシャツを着ていたこと、痛いときや不快なときは我慢しないで相手に伝えていること、腟の潤いが足りないときには潤滑ゼリーを使っていること、などを教えてくれました。  「うちもはじめは心配だったけど、だんだん慣れてきたよ」と言うBさんに力づけられ、Aさんは思い切って、ご主人の気持ちも聞いてみようと思いました。「前のようにできるか心配だったの」と言うAさんに、ご主人は、「僕も、求めていいのか、そっとしておいてあげるべきなのか、迷っていたんだ」と答えました。

それからまもなく、Aさんご夫妻は性生活を再開しました。無理せず少しずつ、と、お二人は思っています。

Cさん(50歳)の場合

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Cさんは50歳。片方の乳房全摘出術を受け、ホルモン療法も受けています。

Cさんは、以前から性生活のこともご主人とざっくばらんに話しあうほうでしたし、手術のあとも見せていました。ご主人は退院後比較的すぐから求めてきましたが、Cさんは、「疲れやすいし、まだ全然そういう気持ちになれない」と断っていました。それでも、手をつないで眠ったり、優しく抱きしめてもらったりすることでCさんは十分満足でしたし、以前より、そういう温もりがとても嬉しく感じられました。

体力が回復してくると、だんだん性生活のことが気になってきました。何度目かに求められたときに思い切って応じてみたのですが、手術のあとに触れられると何とも言えない違和感があり、加えて以前にはなかった性交痛が強く、とても楽しめるものではありませんでした。その様子はご主人にも伝わったらしく、何となくきまずい雰囲気が残りました。

その後、何度か性生活はあったのですが、今度もまた痛いかもしれないと思っただけで、Cさんはからだがこわばるような気がしてリラックスできません。再開する前よりも一層、性生活がおっくうになってしまいました。ただ、痛みや不快感については我慢せず伝えているので、ご主人なりにいろいろ工夫してくれるのはありがたいと思っています。それにしても、なぜ急に性交痛が出るようになったのか、痛くても続けるべきなのか、ほかの人たちもそうなのか、Cさんとしては疑問です。

監修:
国立がん研究センター がん対策情報部センター がんサバイバーシップ支援研究部 高橋都
公益財団法人 がん研究会有明病院 乳腺センター 大野真司
国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター 看護部