がんの場合、「完治」とはがん細胞が身体から完全に除去され、その後再発がない状態を指します。完治の可能性は、がんの種類、治療前のステージ（病期）、治療方法、個々の患者さんの健康状態などによって異なります。

トリプルネガティブ乳がんは化学療法の感受性が高いといわれており^＊1、一般的に化学療法が行われます。
完治するかは一概には言えませんが、治療後に良好な状態を維持できる患者さんもいらっしゃいます^＊1。
まずはご自身の状態や治療について、主治医の先生とよく話し合うことが大切です。

補足：
完治を目指すためには、転移や再発のリスクを最小限に抑えるための治療が重要です。
トリプルネガティブ乳がんは遺伝性の場合があり、おおよそ20％が「遺伝性乳がん卵巣がん（hereditary breast and ovarian cancer：HBOC）^※」と呼ばれる遺伝性の疾患であるといわれています^＊2。最近では、遺伝性かどうかを調べるために、主な原因遺伝子であるBRCA1、BRCA2という遺伝子を調べる検査を、条件が当てはまる場合には保険で受けることができます。（「BRCA1/2遺伝子検査のためのかんたんチェック」を参照）。

HBOCのかたは乳がんや卵巣がんを発症しやすい体質であり、新たな乳がん（対側乳房の乳がん）や卵巣がんの発症リスクを抑える目的で、対側リスク低減乳房切除術（contralateral risk reducing mastectomy：CRRM）や、リスク低減卵管卵巣摘出術（risk reducing salpingo-oophorectomy：RRSO）といった手術が考慮されます。
これらの手術を行った結果、対側乳房の乳がんと卵巣がんの発症リスクが減少したことがわかっています^＊3,4。

※遺伝性乳がん卵巣がん症候群と呼ばれることもあります

＊1：Liedtke C, et al. J Clin Oncol. 2008; 26(8): 1275-1281.
＊2：Fujisawa F, et al. Mol Clin Oncol. 2021; 14(5): 96.
＊3：Li X, et al. Clin Cancer Res. 2016; 22(15): 3971-3981.
＊4：Finch AP, et al. J Clin Oncol. 2014; 32(15): 1547-1553.

監修：大谷しょういちろう乳腺クリニック院長大谷彰一郎先生（元広島市立広島市民病院乳腺外科）